中国人女性は働き者だから共働きが多いんでしょ?このような質問を日本の友人からよく受けます。実際に共働き家庭が大半を占める中国ですが、働き者というイメージとは裏腹に、実は中国では役割分担がはっきりしているので、女性はほぼ家事などしていないのです。今回は日本とまるで違う中国の家事・代行事情について現地よりお伝えします。
目次
1.中国の共働き事情
ここ中国では共働き夫婦世帯が大半を占め、統計上では、上海など大都市部在住の「共働きでない夫婦」は、全住民のわずか5.7%しかいません。これは東京の10分の1ほどの割合になります。
しかし現地在住の筆者は、この5.7%の方々も、日本で言うところの専業主婦の人達ではないと推察しています。
たとえば、超富裕層で家政婦が何人も当たり前のようにいる家庭、または身体的な事情で奥さんが働けない家庭などであり、日本のように「家事や育児があるために働きに出れない」ということではないということです。
結論から言いますと、中国では共働きが多いのではなく、むしろ専業主婦はほぼいないに等しいと言えるのです。そして、中国の社会雇用システムもこの習慣にきちんと伴っています。
1-1.中国の女性雇用・休暇制度は?
中国では、女性も男性と全く同じくフルタイムで仕事をするのが当たり前のため、給与や待遇に男女差などは一切ありません。
そうは言いましても、出産は女性しかできませんよね。では中国では女性が出産した場合の育児休暇などはどうなの?というのが気になる点ですが、雇用システムに男女差がない代わりに、中国では日本のように数年単位の育休制度は存在しません。
つまり出産だからと大した特別待遇がある訳ではなく、ほとんどの女性は妊娠しても、臨月まで大きいお腹で出勤するのも普通であり、育休は出産予定日の15日前~出産後90日前後を上限とする期間のみ取得することができますが、実際にはこのような育休をきちんと取っている中国人女性はほぼ見受けられません。
2.中国の夫婦の家事分担事情は?
前述したとおり、雇用制度に男女差が全くない中国ですが、では夫婦間の家事分担はどのようにしているのでしょうか?
データ上では、中国では男性も家事を分担している家庭は全体の30%ほどと出ています。
これは日本のわずか10%ほどと比較すると高い割合ですが、中国の男性も家事への参加はそれほど積極的でないことが表れていると言えます。
ただしこの30%という数字に関しましても、単純にそのまま日本と比較はできないと考えています。それは中国と日本では、家庭で行うべき家事内容が全く異なるからです。では、次に中国の家事の実情について詳しく述べていきましょう。
2-1.中国では掃除以外の家事はさほど必要ない
家庭で必要な家事と言えばおおまかに以下の3つとなります。
- 料理
- 洗濯
- 掃除
しかし、中国の生活習慣上、①の料理と②の洗濯は、さほど家庭で行わなくても生活ができてしまえるのです。
2-1-1.料理
まず①の料理ですが、中国では「お持ち帰り=テイクアウト」文化が当たり前となっているため、どこのレストラン、食堂でも持ち帰りが可能です。そして外食に占める割合も中国人は元からかなり高いため、家で料理を作ったり、食事を必ず摂るという習慣は日本ほどではありません。
2-1-2.洗濯
中国では洗濯クリーニングサービスが日本以上に至る所にあり、日本人のクリーニングサービスの使い方とは明らかに異なります。
たとえばパンツなど下着までクリーニングに出してしまう人も少なくなく、特にホワイトカラーでスーツを着て出勤しなくてはならない職業の人ほど、その傾向は強いようです。
もちろん所得の低い人は家庭で洗濯していますが、洗濯機で乾燥までまとめてやってしまうことも多く、そんなに手間をかけた洗濯を家庭で行うことはありません。
2-1-3.掃除
中国でも部屋や水回りの掃除は逃れることのできない家事項目と言えます。この掃除のみを外部の掃除業者に委託している夫婦も多いですが、仮に自分達で行う場合は、夫婦間で月水金は私、火木土は貴方!など中国らしくサイコロで掃除担当日を決めるなど、微笑ましい!?やり取りもよく見受けられます。
3.中国の家事代行サービスの普及度は?
数年前から中国において他国を圧倒的に凌ぐ勢いで盛んなビジネスとなっているのが「家事代行サービス」です。
ちなみに筆者の回りの標準的な所得の中国人の友人達は、皆両親と同居をしているパターンの家庭が多く、家事と子育ての80%以上を親に丸投げしています。
しかし親と同居していない中上級クラス所得の若年層夫婦は、家事代行サービスを、掃除だけなど部分的な利用から住み込みで雇うまで、何らかの形でうまく利用しています。
さて実際のその普及率ですが、現在家政婦代行業者に登録する家政婦の数は中国全土で2500万人にものぼっています。ご存じのように中国は13億人という巨大な人口を持つ大国ですが、現在家事代行サービスを利用できるような中上所得階級といわれる富裕層の数が4~5億人ほどと言われていますので、単純にその人口を家政婦の数で割ると、富裕層における普及率は3~5%と推測できるでしょう。1人の家政婦が何家庭かを担当している場合が多いので、実際はもっと多い割合であると推測できます。
3-1.家政婦大国である香港
現在では中国の一部に戻ったアジアの経済中心都市である香港。実は香港はかなり昔からアジア随一の家政婦代行大国です。人口700万弱の香港で家政婦の数は約24万人と言われています。
香港の家政婦事情が明らかに中国本土と異なる点は、富裕層だから家政婦を雇う訳ではなく、平均所得レベルの家庭でも住み込みで家政婦を習慣として普通に雇用している点です。
この香港の住み込み家政婦のほとんどがフィリピン人であり、香港では対フィリピン人に対する専用の「メイドビザ」という専門のビザを政府が発給しているほど、メイドを雇うことが推奨されている社会なのです。
住み込みのメイドというとお金持ちでないと無理なのでは?というイメージが日本人の感覚ですが、その費用相場は、香港の平均月収が約20,000HKドル(日本円で約280,000)ぐらいの中から、その月収の3分の1の約7,000HK$(100,000円前後)ほどをメイドに払うようになっています。このメイド達の質と条件により価格が異なり、広東語が話せる、中華料理が作れる、子供のシッターまでお願いすることができる...などで変動します。
日本で収入の3分の1を家賃にまわすことと同じ感覚で、特に向こうでは割高だとは思っていないようです。メイドの質の向上が、自分たちの生活の向上につながると考えているので、収入が上がれば、その分賃金の高い質の高いメイドを雇います。日本では考えられないことかもしれませんが、価値観や文化の違いといえるでしょう。
4.中国で家事代行が普及している背景
中国でこれだけ急速に家事代行が普及した背景には、やはり中国が現在世界GDP2位の経済大国になったことと切っても切れないでしょう。
経済発展には優秀な人手の確保が必要です。そのためには、経済の中心を担う若年層が家庭生活・子育てを家事という作業に捉われることなく円滑にすることが必要になります。
そこで中国政府は、数年前に、農村部から都市部への出稼ぎ労働者への規制を緩和し、新たに家政婦の人出を増やす政策を打ち出したのです。
家の事は人に任せ、経済を生み出せる頭脳層は安心して外で仕事に集中できる環境を作ることで、更なる経済発展が望めるという政府の政策は、見事に功をなしたといえるでしょう。
こういった政府の政策による背景以外にも、そもそも家事代行というアウトソーシングが、「役割分担、効率化」を重んじる中国人の習慣とマッチしたことはいうまでもありません。
限られた時間の中で、いかに多くのことを成し遂げるか。それにはやはり、アウトソーシングをうまく利用し、日々の生活を効率化していくことが鍵となるといえるでしょう。
5.まとめ
いかがでしたか?こうして中国の家事・代行事情を紐解いてみますと、我々日本人が家事に対し、彼ら中国人の効率的な面など見習うべきところが多く存在しませんか?
現代は、日本でも女性が社会で当然のように活躍する時代です。既婚者の女性だけが家事をするという規制概念さえ捨て、ほんの少しプロに家事代行をお願いすることで、ご家族やご夫婦で楽しむ時間を作ることも可能になるのです。それこそが家族の真の幸せに繋がる一歩ではないでしょうか。