女性の社会進出に伴い、日本でも認知度が上がってきている家事代行サービスですが、「家事は女性(妻)の仕事」という根強い価値観もあり、普及しているとは言い難いですよね。
一方、アメリカでは気軽に家事代行サービスを利用する人が多く、そのメリットは計り知れないと言われています。そんなアメリカのリアルな家事事情をレポートします。

1.アメリカの共働き事情

アメリカで家事代行サービスが普及している背景には、アメリカの共働き事情や産休・育休制度が大きく関わっています。

1-1.子供を持つ家庭の約60%が共働き

アメリカでは、もともと「男は外で働き、女は家を守る」という考えは全くありませんし、「男女平等」という考えが根付いているため、女性でも男性と同じようにキャリアを積んで、社会的地位を得ることが可能です。
そのため、0歳~18歳までの子供を持つ家庭の約60%が共働きで、6歳以下の小さな子供がいる家庭でさえ、56%とかなり高くなっています。

1-2.産休や育休は、最長12週間の無給休暇のみ

アメリカでは、女性の社会進出に寛大な一方で、社会問題にもなっているのが驚くほど後進的な産休・育休制度です。
アメリカ連邦法では、産休・育休として最長12週の無給休暇を企業に義務付けているだけで、それ以上の支援に関しては州や雇用主に一任されています。したがって、出産ギリギリまで働き、産後約3ヵ月で仕事復帰する女性は珍しくありません。

2.アメリカ人の家事に対する考え方

日本人とアメリカ人の家事に対する考え方や価値観は大きく異なります。

2-1.合理性や効率性を重視するアメリカ人

日本ではしっかり家事をこなすことが「主婦の鑑(かがみ)」と思われていますが、アメリカ人は合理性や効率性を重視し、家事に大した価値を見出していません。実際にアメリカ人の家事時間は1日2時間15分と、日本人の4時間54分の半分以下です。

まずアメリカ人は、電化製品をフル活用します。
たとえば、日本ではまだまだ普及していない食洗機ですが、アメリカでは約90%の家庭に食洗機があると言われており、アメリカ人にとって「なくてはならないもの」という位置付けです。

また洗濯に関しても、乾かす作業はほとんどの方が乾燥機を使います。干して取り込む作業をすることは、合理的なアメリカ人からすると、「乾燥機があるのに、なぜわざわざ時間をかけるの?」と不可解なことなのです。

2-2.家族との時間を重視するアメリカ人

アメリカでは家庭を持つ人が夜遅くまで残業したり、同僚と飲みに行ったりすることはほとんどありません。接待もランチタイムを利用して食事をするというのが一般的です。なぜならば、アメリカ人は家族と過ごす時間をとても大切にしているからです。

日本では、特に小さい子供がいるご家庭では、共働きに限らず専業主婦の場合でも、毎日山ほどの家事や子供の世話に追われ、家族でゆっくり過ごす時間はないに等しいですよね。アメリカ人は、そういう状況下でも、家族と過ごす時間を作るために、合理性や効率性を重視しています。
そして、家事に追われイライラしストレスを溜めるくらいなら、「お金で自由な時間を買えばいい」と合理的に考え、家事代行サービスを利用する人が多いのです。

2-3.ベビーシッターも一般的

女性を支援するサービスの中でも、最も利用率が高いのがベビーシッターです。
前述した通り、アメリカ連邦で定められている産休・育休は最長で12週のみです。女性が仕事復帰をするためには、「両親/義両親など身内に頼る」「託児所を利用する」「ベビーシッターを雇う」という選択肢しかありません。
頼れる身内が近くいない場合は、託児所かベビーシッターを選ぶことになりますが、託児所は利用料が高額な場合が多いので、ベビーシッターを雇う人が珍しくありません。

ベビーシッターを利用しているのは、共働きの家庭だけではありません。
アメリカ人は子供ができても、夫婦だけの時間をとても大切にしています。ベビーシッターに子供を預けて、定期的に夫婦だけで食事にでかける家庭は非常に多いです。

3.アメリカでの家事代行サービスの普及度は?

ベビーシッターや、ホームパーティーの前に家の掃除を依頼するなど単発での利用を含めると、アメリカでの家事代行サービスの利用率は軽く50%を上回ると言われています。
アメリカで家事代行サービスが普及しているのは、前述したとおり、高い共働き率、乏しい産休・育休の制度など社会的背景によるところが大きいです。しかし、それと同じくらいアメリカ人の価値観が大きく関係しています。

自分でなければできないこと以外は、電化製品や他人に任せて時間を作り、その分、家族と有意義に過ごしたいという考えが強いのです。

また、以下のことも家事代行が普及している要因として挙げられます。

3-1.家が広く、土足文化

近年は変化しつつありますが、アメリカ人家庭の多くは土足のまま家に入るため、家の中が汚れやすく、頻繁に掃除が必要になります。また、家が広く、バスルームだけでも2~3か所あるのが普通なので、掃除に時間が掛かることも家事代行が普及している理由です。

3-2.手軽に利用しやすい料金

家事代行サービスの需要が多いので、その分、利用しやすい価格設定になっている点も普及している大きな理由です。
家事代行サービス会社により料金体系はさまざまですし、州や家の広さ、依頼の頻度などによっても大きく異なりますが、一般的に1時間20ドル~40ドル(+チップ)が相場です。

4.実際に利用してみて

アメリカ人の主人と子供と3人家族で、当時共働きだった我が家は、義理の両親が幼い子供の世話をしてくれていました。
それでも、週末は食材の買い出し、掃除、洗濯、3食の食事の準備に加え、平日の食事の作り置き…と家事に追われ、1日が終わってしまうことも珍しくありませんでした。主人は出来る限りのサポートをしてくれていましたが、夫婦ともに平日の疲れも取れずクタクタ…。そんな時、家事代行サービスを長年利用していた義両親に勧められ、一番ストレスに感じていた家の掃除を依頼することを決めました。

初めて利用したときのことは、今でも鮮明に覚えています。
玄関を開けた瞬間に清潔感溢れるいい香りが漂ってきて、トイレやバスルームは水滴1つなくピカピカ、フローリングは光が反射してキラキラ…。
何より嬉しかったのが、毎日使用するキッチン!電子レンジや冷蔵庫の中までしっかり掃除してくれ、自分ではなかなか取りきれなかった頑固なガスコンロの汚れも綺麗になっていて、「さすがプロ!」と感動しました。
そして、その日から生活が劇的に変化しました。

週末は家族でゆっくりランチやショッピングにでかけ、帰宅したら見違えるように綺麗な家が待っている…。
時間的ゆとりができただけでなく、心にもゆとりが生まれ、笑顔で過ごせる時間が増えました。「母親(妻)は、家庭の太陽」と言われますが、母親(妻)が笑顔でいられることは、家族の幸せにもつながります。家事代行サービスは、家族の幸せをサポートする大切な存在だと思っています。