夫婦共働きが珍しくなくなった世の中とはいえ、「だからこそ家事は男女で分担するべき」といった考え方まではまだ浸透していないのが日本の現実ですが、海外の国では一体どんな考え方を持っているのでしょうか?現地在住の筆者が、ニュージーランドの家事や、家事代行事情について調べてみました。

1.ニュージーランドってこんな国

ニュージーランド

地球の南半球に位置する自然豊かな国ニュージーランドは、日本とほぼ同じ国土面積を持つ島国です。人口は約470万人で、日本と比べるとたったの30分の1。たっぷりとしたスペースがあるためか、そのぶん気質もおおらかで、細かいことは気にしないのんびりとした国民性が特徴です。

ニュージーランドは世界で初めて女性参政権が認められた国であり、社会的地位においても男女間の格差が少なく、女性が働くことに対してとても寛容です。2017年に歴代2人目の女性首相が就任しましたが、任期中に産休を取って復職するなど、国を挙げて協力的な様子にその傾向がよく現れています。

2.ニュージーランドの共働き事情

女性が働きやすい国ニュージーランドでは、夫婦共働きする家庭が珍しくなく、その数は全家庭のおよそ半分といわれています。また、事実婚や同性婚が認められていて自由な反面、離婚率が高いのも事実です。女性一人で家庭を養わなければならず、家事や育児に専念しづらい状況を抱えた家庭も少なくありません。離婚した忙しい両親のもと、子供たちが一定の周期で父親と母親側の自宅を往復するなど、日本ではあまり見られない光景もよく見られます。

3.ニュージーランドの夫はイクメン?キウイハズバンドとは

キウイフルーツとキウイ

ニュージーランドでは、家事や育児を快く協力してくれるイクメン気質な男性のことを「キウイハズバンド」と呼びます。この名前の由来、実はニュージーランドを代表する果物の「キウイフルーツ」ではなく、そのキウイフルーツに見た目がそっくりなニュージーランドの国鳥「キウイ」から来ているんです。このキウイ鳥のメスが産んだ卵をオスが温めてかえすという習性を、同じく家事や育児に協力的なニュージーランド人男性に例えて「キウイハズバンド」と呼ぶようになりました

ニュージーランド人男性が家事や育児に協力的な理由には、やはり、女性の社会進出に寛容で男女の格差が少ないニュージーランドのお国柄が強く反映されていると言えます。お互いが仕事を持っているのであれば、家事や育児を分担するのは当たり前だという考え方が一般に浸透しているのです。

「女性に対してどうしてそんなに協力的なのか?」との質問に、「女性は子供を産むから」と返答するニュージーランド人男性もいます。自分たちにできないことをする女性に対して敬意を払う姿勢は、まさにメスに代わって子供を孵化させるオスのキウイ鳥そのものだと言えますね。

4.ニュージーランドの家事事情

フィッシュアンドチップス

ニュージーランド人は、日本人ほどは家事に時間をかけません。夫婦共働きで時間が取りにくい家庭が多いのも理由のひとつですが、基本的に、おおらかで細かいことを気にしない国民性が強く関係しています。

4-1.料理

準備が手軽でまとめて調理しやすいからか、食卓に何品も並ぶ日本とは違い、ニュージーランドではワンプレート料理を好む傾向があります。食に対してそこまでのこだわりを持たず、毎日きちんとした料理をするというよりは、市販のスープストックやソースを利用して、メインとなるパスタや肉魚類の味にバリエーションをつけるといった調理法をする家庭が多く、そのためスーパーマーケットにはたくさんの種類の調味料が売られています。

夫婦共働きや家族が多く忙しい家庭では特に、手間や時間をかけず簡単に食べられる料理が好まれるため、食卓に出来合いのものが並ぶ日も珍しくありません。テイクアウェイ(イギリス英語でいうテイクアウトフード)も多く、中でもフィッシュ&チップス(白身魚のフライとフライドポテト)やバターチキンなどのインドカレーのお店は、金曜の夕方になると列ができるほど賑わいます。これも、家事に時間をかけず、食にあまりこだわりを持たないニュージーランド人ならではの気質がよく表れています。

4-2.洗濯

ニュージーランドでは大体の一般家庭に洗濯機があり、洗濯のやり方はほぼ日本と同じです。多くの家庭で、洗濯機で洗ったものを外干しします。子供や家族の多い家庭では乾燥機を使う割合も高いですが、一般的には外干しか、室内干しする家庭がほとんどです。夫婦共働きの家庭では、洗濯は1週間に一度、週末を利用して行う家庭が多いようです。

4-3.掃除

平均して数週間、または1ヶ月に一度ほどのペースで掃除をする家庭が多いようです。掃除機をかける時は日本のように埃をはらってからではなく、そのままかけます。キッチンなど水回り周辺のフロア床はモップ掛けをしますが、これも頻繁に行うのではなく、通常はほうきでゴミを取っておいて、汚れがしつこくなってからきちんと掃除をするというやり方が一般的です。

掃除にあまり時間をかけないのは、共働きや育児で手が回らないことも理由のひとつですが、掃除自体にあまり重きを置かず、洗濯や料理よりも後回しで構わないというニュージーランド人のおおらかな気質がここにも垣間見えます。

5.ニュージーランドの家事代行事情

ベビーシッター

ニュージーランドでは、家事代行のことを「ホームサービス」と呼びます。街には大小の家事代行サービスを行う企業が存在し、中には女性だけによる代行サービスもあります。利用者は様々ですが、夫婦共働きの家庭をはじめ、単身で暮らす年配の方、多忙なシングルペアレンツなどが一般的です。

夫婦共働きが多いため、ベビーシッターの需要と供給も高い国ですが、家庭に在住して子供の面倒を見るナニーやオーペアといった専門職は、育児と同時に掃除や洗濯など、多忙な家主に代わってある程度の家事を代行することもあります。そのため、スーパーマーケットや公共機関に置かれた掲示板には、ベビーシッターを兼ねた家事代行を求める広告もよく見られます。インターネットのオークションサイトには専用ページが設けられ、簡単にサービスを購入できることから、ニュージーランドではかなり頻繁に家事代行サービスが利用されていることが伺えます。

ニュージーランドの家事代行サービスの相場価格は、キッチン、お風呂、トイレなどの水回りをピカピカにしてもらうのに約1万円と、そう高くはありません。時給換算をする企業も多く、その場合は1時間3千円程度が相場です。掃除、アイロン掛け、窓拭き、水まわりの汚れ落としをセットにして注文し、定期的に契約する家庭も多いようです。家事代行サービスにはギフトカードの販売もあり、奥さんの誕生日や結婚祝いに旦那さんからプレゼントできるようにもなっています。いつもはなかなか口にできない感謝の気持ちをこんな形で表現されると女性は嬉しいものです。

カーペット大国といわれるニュージーランド

ニュージーランドのカーペットクリーニングサービス

靴を履いたまま土足で家に上がることや、古い建物を改築しながら使い続けるなど、イギリスの植民地だったニュージーランドでは、ヨーロッパ人移民者によって作られた文化が定着しています。多くの住宅が1940〜50年代に建てられたもので、本来、フローリング床が一般的でしたが、自国生産した羊毛カーペットを入手しやすかった昔の背景も手伝ってか、寒さから足を保護するためにカーペットを敷く家庭が一般的となりました。そのため、近年ではリビングルームから階段に至るまでのほぼ全フロアにカーペットを敷く家庭が増え、まさに「カーペット大国」と呼べるほど生活にぴったりと密着しています。

土足のままカーペットを歩けば靴の汚れを吸い取りやすく、ある程度たつとシミや汚れが目立ってきます。犬や猫を室内飼いする家庭も多いので、排泄物の汚れ落としのためにも、ニュージーランドではカーペットクリーニング業者が多く存在しています。また、コストをかけたくない人のために、ほとんどのスーパーマーケットでカーペットクリーナーの貸し出しサービスが行われ、一日5千円ほどで、好きな時間に気軽に掃除できるようにもなっています。

6.まとめ

ニュージーランド人の家事に対する考え方は、仕事のやり方とよく似ています。企業や官公庁ではフレックスタイム制を取り入れているところが多く、一日8時間労働であれば好きな時間に出社して好きな時間に終わることができます。そうすることで混み合う通勤は避けて疲れをためず、夫婦共働きであれば、お互いに就業時間を調整して家事や育児を分担できます。年末年始のお休みは少なくても一週間、長くて三週間が一般的で、有給を利用して年間に長期連休を取る人がほとんどです。このように、ニュージーランド人には「仕事に縛られたくない」という概念があり、家事に対しても、仕事と同じように「やらなければいけない」という義務的な見方をあまりしません。あくせく働くよりものんびりと暮らしたいニュージーランド人の、「できることをやり、できないことは無理をせずに誰かの手を借りる」といった割り切った考え方だからこそ、家事代行サービスも気軽に利用されているのでしょう。