共働き家庭の増加に伴い、家事は女性がするものという価値観はすでに古いものとされています。しかし、現実的にはまだまだ女性がほとんど一人で抱え込み、男性には「手伝ってもらう」「分担してもらう」という感覚の家庭は少なくないのではないでしょうか。いま必要なのは、家事を“手伝ってもらうもの・分担するもの”から“シェアするもの”へと発想を転換することです。本記事では、家事のシェアという新しい考え方についてご紹介します。

1.長時間労働と家事に追われる日本女性

赤ちゃんを抱っこする女性

まず、リンナイ株式会社が2017年に行った調査をもとに、世界の共働き家庭の家事事情を見ていきましょう。
調査は日本、韓国、アメリカ、ドイツ、デンマークの30~49歳の共働きの既婚者500名を対象に行われました。調査によると、一日の家事時間が最も長いのはアメリカで2.63時間。日本は1.88時間で、2.05時間の韓国に次ぐ三位です。
意外と日本人の家事時間は短いと思われるかもしれませんが、注意すべきは労働時間の長さです。アメリカは家事時間が最も長い一方で、労働時間は6.68時間と五か国中最短です。対して日本は9.19時間と五か国中いちばんの長さ。結果として夫婦の時間は1.31時間と五か国中ワーストの短さとなっています。

さらに注目すべきなのは、日本では家事分担している人の割合が56.0%と五か国中最低であることです。日本では共働き家庭でも、まだまだ女性の負担が大きいことがわかります。
では、家事分担をすればよいのかというと、実はそこにも落とし穴があります。家事には、多くの名もなき家事が存在します。たとえば、「ゴミ出し」は夫の役割と決めていても、「各部屋からゴミを集める」「ゴミ袋にまとめる」「新しいゴミ袋を設置する」などの「名もなき家事」は妻がやっているのが現状ではないでしょうか。

ダイワハウスが行った意識調査で、共働きの夫婦に家事負担割合を尋ねたところ、妻の回答では「夫1割:妻9割」がトップ。一方、夫は「夫3割:妻7割」という回答がトップという結果だったそうです。つまり、妻が思っているよりも、夫は2割ほど多くやっているつもりでいるという、夫婦間に大きな意識の差があることがわかります。

[リンナイ調べ]
https://www.rinnai.co.jp/releases/2018/0208/

[ダイワハウス調べ]
https://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/lifestyle/kajishare/

2.時代のキーワードは“シェア”

shere

これからの社会のキーワードの一つが、「共有する」「分かち合う」という意味のシェアという概念です。カーシェアリングやシェアオフィス、シェアハウスなどのモノだけでなく、スキルや知識のシェアなどシェアリングエコノミー市場は拡大を続けています。リソースを自分だけで抱え込んだり無理をして所有したりするのではなく、必要なときに融通しあえるシェアリングはエコロジカルで合理的。余分なものを持たず軽やかに生きていきたいという時代の気分を表しているといえるでしょう。

3.家事も“シェア”する時代へ

家事を「分担する」というと、どちらが多く負担しているか気になったり、自分の分担以外のことは「他人ごと」になってしまったり、「できていないこと」に目を向けがち。大まかな概念は同じですが、より、「一緒にする」「共有する」ことに目を向けた「シェア」という概念を使っていきましょう。「シェア」するのは、夫婦間、家族間だけではありません。便利な家電や宅配サービス、家事代行、お掃除代行などの外注サービスとも積極的に「シェア」してみてはいかがでしょうか?

3-1.家族と“シェア”

男性 料理

まずは、家族と家事時間を「シェア」してみてはいかがでしょうか。たとえば、「土曜日の午前中は、掃除をする時間」など、週一回でもみんなで家事をする時間をもってみましょう。お子さんがまだ小さくても、各自小さな雑巾を一枚ずつ持たせ、「一番汚くしてきた人が勝ち」などゲーム感覚で楽しむことができます。
家事を一緒にすることで、家事を自分ゴトにしてもらうと同時に、家族とのコミュニケーションの時間にもなるのでおすすめです。

お子さんが少し大きくなってきたら、思い切って、「お米を研いで炊飯器のスイッチを入れる」「お風呂掃除をしてお風呂を沸かす」など一つの仕事を任せてみましょう。もし自分が忘れたら、「ご飯が食べられない」「お風呂に入れない」という状況を作ることで、みんなが協力して生活を成り立たせているという意識を持つことができます。
休日はみんなで料理を作って、同時に食育の時間にするのもおすすめです。外出することだけがレジャーではありません。みんなで一つのことを成し遂げるという経験は、お子さんにとってもかけがえのない思い出になるはずです。

3-2.家電と“シェア”

お掃除ロボット

最新のテクノロジーは家庭の中にも浸透しつつあります。いまやAIも日常生活に当たり前のように存在するものとなりました。乾燥機能付き洗濯機や食洗器をはじめ、朝に材料をセットしておけば夕食の時間には食べ頃の料理ができあがるという調理家電やお掃除ロボットなど、家事を楽にするための家電は続々と登場しています。
特に、乾燥機能付き洗濯機、食洗器、お掃除ロボットは、働く女性には欠かせない「三種の神器」ともいわれるほど。

かつては、掃除といえばほうきで掃いたり雑巾がけをしたりするのが当たり前でした。掃除機が一般家庭に広まり始めたとき、「掃除機を使う主婦は手抜き」という批判があったといわれています。しかしそれは合理的な理由からではなく、「手を動かしてこそ家事」という精神論がもっぱらなのが実態です。
掃除機や洗濯機という画期的な家電が主婦を長時間の家事労働から解放し、女性が職場へ進出する一助となりました。時代によって生活のニーズは変わっていくのですから、いまの時代に合ったテクノロジーを取り入れるのが理にかなっています。精神論にとらわれず、便利な家電と積極的に家事をシェアしていきましょう。

3-3.家事代行サービスと“シェア”

風呂掃除

仕事でも大きな責任を負っている今の女性にとっては、家族、家電に頼っても、まだまだカバーしきれない「名もなき家事」は多く、手が回らない、ゆっくりする時間がない、というのが現状ではないでしょうか。
そんなときは、家事代行サービスをお願いするのも一つの方法です。
日本女性は「仕事・家事・育児を完璧にこなすのがあるべき姿」という幻想にとらわれていることが多く、共働きでも家事を外注することに罪悪感を抱く人もいるでしょう。

ですが、真のゴールは、仕事も家事も育児も完璧にこなすスーパーウーマンになることでしょうか。それとも、自分らしく笑顔で暮らせることでしょうか。限られた時間やエネルギーを最大限に活用して毎日の生活をもっと充実させるために、家事代行サービスという選択肢も検討してみましょう。