「時間がない!」「気力も体力も限界!」という焦りや疲弊は、共働き世帯に共通するストレスですよね。毎日をまったく余裕のない状態で回していると、「何のために働いているのかわからない」「仕事辞めようかな……」という思いが湧いてくることもあるのではないでしょうか。
退職する?このまま頑張る?大きな決断を下す前にもう一度、共働きのメリットとデメリットとをきちんと確認しておきましょう。
目次
1.共働きのメリット
慌ただしい生活にくたびれてしまっていると、共働きというスタイルに対しネガティブな気持ちを抱いてしまいがちですが、一旦立ち止まって共働きならではのメリットについて考えてみましょう。
1-1.経済的に安定する
単純にいって2馬力で稼ぐわけですから、夫婦のどちらか一方の収入だけに頼る生活よりも経済的に安定します。
この経済的な安定というメリットは、共働きをやめるという選択を押し留まらせる大きな理由になるようです。
結婚と同時に退職して専業主婦となった妻と、結婚後も働き続けた妻の生涯収入を比較すると1億円前後もの差がつくという試算結果もあります。
1-2.税制面で有利になる
単に収入が2人分に増えるというだけでなく、共働きというスタイルには税制面でも有利に働くというメリットがあります。
なぜ共働きが税制面で有利になるかといえば、日本の所得税の課税方式が、給与収入などの課税対象が高額であるほど税率も高くなるという「累進課税」となっているから。
たとえば世帯収入を800万円とした場合、夫ひとりで800万円を稼ぐよりも、夫婦2人合わせて800万円稼ぐほうが税率は低くなり、同じ800万円であっても全体として課せられる税金が少なくなるのです。
1-3.出産時の給付金が増える
出産費用や妊婦検診費用などの経済的負担を軽減するために給付される「出産育児一時金」は、すべての妊婦さんに給付されます。
※出産育児一時金は、2020年現在赤ちゃん1人当たり42万円。ただし産科医療補償制度加入の医療機関等以外での出産の場合は40万4千円といった例外もあるため、詳細は要確認。
※健康保険組合によっては、組合独自の付加給付(支給額の上乗せ)がある場合もあります。
さらに、妻自身が就労しており社会保険に加入している場合は、この「出産育児一時金」に加えて、「出産手当金」を受け取ることができます。
大雑把にいうと、出産前に受けていた給与の概ね3分の2程度が支給されます。
出産のため就業できない期間(出産日以前42日目~出産日の翌日以後56日目)の所得減を補うものとして就労先企業の健康保険から支給されるものですので、妻自身が会社で働いていなければ給付されません。
※多胎出産(双子や三つ子など)の場合は出産日以前98日目から支給されます。
※出産予定日より遅れて出産した場合は、実際に出産した日までの期間についても上記期間に追加して支給されます。
1-4.将来受け取れる年金額が多くなる
共働きかそうでないかで、働いている期間中の収入だけでなく老後の年金額も変わってきます。
ざっくりいえば、現役時代に年金保険料を多く納めるほど老後に受け取る年金額は増え、且つ、会社員であれば納める年金保険料は給与額に応じます。
とくに、夫婦2人とも正社員で厚生年金を納めた場合、、将来国民年金に加えてダブルで厚生年金を受け取ることができるので、大変有利といえるのです。
老後に多くもらえるとしても現役時代に多く納めるのだから意味がない?
いいえ、将来受け取れる年金額は以前よりも減ってきているとはいえ、年金制度が破綻することはありませんので、納付額を上回る金額が支給されるシステムであることに今なお変わりはありません。
そもそも年金制度は世代間での扶養システム(現役世代が高齢者を扶養する)ですので、損得を基準に考えるべき性質のものではありませんが、仮に損得で考えるとしても年金制度は「割のいい投資」といってよいでしょう。
1-5.生きがいや自信につながる
働くことは、苦労は多くても同時に多くの手応えややりがいを得られるチャレンジでもあります。
自分自身の生きがいを仕事に見出していたり、仕事が自信につながったりしているのであれば、あなたにとって仕事とは家庭と同じくらいかけがえのないものであるということ。
そんな大切な仕事を「共働きは大変だから」という理由で手放すとしたら、自分が犠牲になったという思いや後悔が後々まで残る可能性さえあります。
諦めないために手を尽くすだけの値打ちと意味があるのだということに意識をフォーカスすれば、乗り切る方法を模索するエネルギーが生まれてくるはずです。
1-6.子供と適度な距離が置ける
相手が誰であれ、四六時中一緒にいるのでは息が詰まることもあるでしょう。
その相手がまだ分別を持たない幼い子供で、しかも自分の子供となれば、ただしんどいというだけでなく、親としての責任感からあらゆる葛藤に心がすり減らされ、気持ち的な余裕が失われていくのも自然なことといえます。
子供に振り回されて、朝の出勤前に保育園へ預けに行くときにはげんなりしていても、終業後にお迎えに行くときには心からの笑顔で「ただいま~!」と子供を抱き上げられるということはありませんか?
一時的に子供と離れることで気持ちにゆとりが生まれるからこそ、子供を愛おしいと感じる心に気づくことができるということですよね。
親の気持ちが安定していると子供の心も安定するといわれていることを考えれば、朝から晩まで子供と一緒に過ごすことにこだわる必要性は必ずしもないといえそうです。
また、子供自身にとっても保育園などの集団生活の場は、大勢の人とのかかわりあいや、家庭では得難い体験といった貴重な体験を得られる場所でもあります。
社会性や自立心を小さい頃から無理なく育んでいけるという側面にも目を向けてみましょう。
2.共働きのデメリットは?
ここまで共働きのメリットを見てきましたが、デメリットについても考えてみましょう。
2-1.支出が多くなりがち
職種や働き方にもよりますが、特に残業するのでなくても手間暇かけて料理をつくる時間を捻出するのは現実的に難しいというのが一般的な共働き世帯の実情ではないでしょうか。
必然的に、仕事で帰りが遅くなれば夕食は外で済ませようということになったり、帰宅途中にお惣菜を買って帰ろうということになったりします。
衣類についても(これも職種などにもよりますが)、家にいるときと同じようなラフな恰好というわけにはいきませんし、週末にまとめて洗濯するスタイルなら最低限必要な枚数は増えます。
家事に充てられる時間が限られ、職場という社会的な環境に身を置く以上、こうした支出は必要経費。
「専業主婦(主夫)だったらかからなかったはずのお金」がある程度どうしても発生してしまいます。
2-2.時間的余裕がない
すべきことが増えるということは、時間を費やす対象が増えるということ。
どれだけ工夫して時間を工面しようとも、仕事・家事・育児と対応分野が多くなるほど時間が足りなくなってくるという理屈は根本的には変わりません。
それでも夫婦間で上手にタスクを分散できていればチームワークの効率のよさを活かせますが、残念ながら実際には仕事以外のタスクの大半が妻側に投げられているケースが多い傾向です。
その結果、妻の負担だけが一方的に広がって、毎日フル回転、時間的余裕が一切ない状態となってしまっている方が多いのではないでしょうか。
3.まとめ
共働きをやめるか続けるかで迷っている夫婦の多くは、何を優先したいかで決めるというよりは、共働きのデメリットが大き過ぎるためにそのメリットを諦めるという選択をしようとしている場合が多いのが実情です。
つまり、デメリットを克服することができさえすれば、共働きを続けたいと考える夫婦は少なくないといえるでしょう。
おそらくもっとも根深い共働きのデメリットの一つである「時間的余裕のなさ」は、家事代行サービスを利用するなどの家事のアウトソーシングの他、夫婦でタッグを組めるかどうかがポイント。
共働きとは文字通り夫婦2人で共に働いて家庭を支えていくスタイルです。
その大きなメリットを享受するためにも、デメリット解消の方策を一度じっくりと夫婦で話し合ってみませんか?