防災意識の高まりとともにローリングストック(循環備蓄)の考え方が浸透しつつある一方で、思ったようにいかないという声も少なくありません。
ローリングストックのシステムをスムーズに回していくために押さえるべきポイントとは何でしょうか。
本記事では、ローリングストックが一般家庭の防災対策としておすすめな理由、ローリングストックがうまく機能しない原因、無理なく回して行くためのコツをご紹介します。
目次
1.ローリングストックの考え方の基本とは?
ローリングストックとは、日頃使う食材・日用品を少し多めに買っておき、消費した分を補充しながら在庫を維持するという備蓄方法です。
在宅避難のケースが想定されるようになったこともあり、非常用の持ち出しリュックに加え取り組むべき備え方として注目を浴びています。
基本となる考え方は「常に一定量以上の在庫がある状態をキープする」というもの。
今ある分がなくなってから買うようにするというのは堅実な買い物方法ですが、ローリングストックの観点からはNG。
1週間分をまとめ買いする週の始めは食材であふれ返っていても、冷蔵庫も戸棚もほぼ空っぽになった週の終わりに災害が来れば窮してしまいます。
2.ローリングストックが一般家庭向きの防災対策である3つの理由
ローリングストックが推奨されるのは、一般家庭に向いた防災対策だから。
家庭向きとされる理由は何でしょうか。
2-1.「備蓄品管理」の仕事を増やさなくて済む
備蓄品は放っておけばいいわけではなく、定期的に在庫数を確認したり新しいものに入れ替えたりといったメンテナンスが必要です。
とはいえ、たとえ年に一度であってもきちんと管理するのは、その必要性や頻度を覚えておくことも含め結構面倒なもの。
ローリングストックなら「使った分を補充する」を繰り返すだけなので、備蓄品の管理という個別の仕事を増やさずに済みます。
2-2.備蓄専用スペースの確保が不要
家族全員が最低数日間は困らないだけの量を保管しておくとなるとかなりのスペースが必要です。
いつ役立つかわからないもののために専用の保管スペースをたっぷりと確保するというのは、一般家庭の限られた屋内空間ではなかなか難しいですよね。
基本的に「いつもの収納場所」で管理する手法のローリングストックなら、専用スペースの確保が不要です。
2-3.食べ慣れているものだから安心
美味しい保存食がたくさん見つかる今日であっても「いつもの食材」もやはり備えておきたいのは、非常時には食べ慣れたものを口にできることが助けとなるから。
被災時などの極めてストレスフルな状況下では、いつもと違う食事内容はもちろん、封の開け方に慣れていないこと一つ取っても気力を奪われてしまうもの。
いつも通りにしていられることの割合が増えるほど、心身にゆとりを保てます。
また、家族の誰かが食品アレルギーを持っている場合には、これなら大丈夫とあらかじめ判っている食品があることは大きな安心感につながるでしょう。
3.ローリングストックがうまくいかない原因は?
手軽にできそうに思われるのに、うまくいかないケースも意外と多いローリングストック。頓挫してしまう原因にはどういったことが考えられるでしょうか。
3-1.「非常用」という意識が先行した品揃え
非常時を考えての備蓄ですが、その意識があまりにも強いと、備蓄する品が「カロリーは摂取できるけれど食欲は湧きづらいもの」や「保存期間の長さ優先で選ばれたもの」に偏りがちに。
その結果として日常的に消費しなくなれば“循環”しませんので、ローリングストックという手法は成り立たなくなります。
備蓄品だからと構えずに「買い置き」と捉えてみましょう。
3-2.在庫管理の手間がかかるスタイル
必ずしも使う場所に置いておく必要はありませんが、在庫を別の場所に保管する場合には、日々わざわざ取りに行かなくてはなりませんし、目が届かないため数量確認などの手間が別途発生します。
そういったことが面倒で続かなくなる例は珍しくありません。
また、保管場所が離れているとローリングストックの大原則である「先入れ先出し」(=古いものから使う)が守られにくくなる可能性も。
無理なくローリングストックを機能させたいのであれば、食品はキッチンに、日用品は使用場所に保管するのがやはり合理的です。
3-3.熱源と切り離して考えている
開封すればそのまま食べられるような食品は、非常食の優等生です。
でも、そういった種類に限定するとローリングストックに組み込めるものが少なくなり、備蓄の意味が半減してしまうケースも。
カセットコンロなどを用意して熱源を確保すれば、カップ麺やインスタント味噌汁、そうめんなども備蓄品の対象となります。
また、温かいものを食べると気持ちがホッと安らぐという点も、災害時などには見逃せないメリットです。
4.ローリングストック方式で無理なく回していくためのコツとは?
「備蓄のため」という特別扱いや新たな手間をいかに減らせるかがローリングストック成功の鍵。楽に回していくコツにはどういったものがあるでしょうか。
4-1.「好きなもの」「我が家の定番」ベースで構築する
ローリングストック用にと備蓄対象品を探すのではなく、もともと常備している(あるいは常備に近い)食材や日用品の中からローリングストック向きの品を見つけましょう。
家族全員が好きで切らさないようにしているレトルトの牛丼の具、うちはこれ!と決めているトイレットペーパーなどといった「好きなもの」や「我が家の定番」がベースです。
日頃から在庫がゼロにならないよう気をつけている品だから、単純に多めに買い置きしておく感覚で備蓄できるはずです。
4-2.使いやすいタイプ中心に拡充する
加工食品には、缶詰め、瓶詰め、レトルトパウチ、真空パック、乾物などさまざまな形状があります。
どの形状を好んで使うかは家庭により異なり、缶詰めはよく食べるけれど乾物はほぼ食べないという家庭もあれば、レトルトにはいつもお世話になっているけれど瓶詰めはまず使わないという家庭も。
使い慣れない形状の食品にはなかなか手が伸びないものです。
こまめに消費してこそのローリングストックなので、馴染みのあるタイプを中心に考えましょう。
また、形状のバラつきが少ないほど収納や管理が楽になるというメリットも。
4-3.備蓄内容を柔軟に捉える
日常的に消費しては補充することを繰り返すのが前提のローリングストック。
賞味期限が半年も1年も先である必要はなく、ほどほどに日持ちすれば十分です。
要するに生もの以外はローリングストックに組み込める可能性が高いということ。
徳用サイズを買っているシリアル、実は常温保存OKの卵や魚肉ソーセージ、たとえ電力供給がストップしてもしばらくは庫内で保つ冷凍食品なども立派な備蓄食品です。
もともとまとまった量を買うことの多い品は、補充タイミングを前倒しさえすればローリングストックが即機能します。
箱買いしているペットボトルのお茶、10kg単位で買うお米、赤ちゃんのおしり拭き用にストックしているウェットティッシュなどは、早めの補充を意識するだけでシステム成立です。
4-4.無理なく補充できる仕組みを整える
ローリングストックの観点から望ましいのは、一つ消費したら一つ補充する、というものですが、それだとかえって手間がかかってしまったり、ついつい忘れがちになってしまうもの。うまく回していくためには、ご家庭に合った方法で仕組み化してみることをおすすめします。
たとえば、
・カゴや箱に入れておき、半分になったタイミングで補充する。
・あらかじめストックする量を決めてリスト化しておき、買い物や注文の際に不足している個数を補充する
・Amazonの定期便等と組み合わせて運用する。
など、ご家庭に合った方法を試してみてください。
仕組みを作るまでは少し面倒かもしれませんが、仕組み化さえしてしまえばあとはそれに沿って運用していくだけなので、無理なく回していけるようになりますよ。
5.ローリングストックは「普段の生活の延長線上」を意識して!
すぐに傷むわけでもない、いずれ必ず使うから在庫が多少増えても大丈夫、とりあえず買っておこう!というもの、ありませんか?
それこそがまさにローリングストック向きの品。それが何かは家庭ごとに違うからこそ、我が家の定番品をリストアップすることが大切です。
普段の生活の延長線上を意識して、非常時にも対応する日常生活スタイルを実現しましょう!